無料ブログはココログ

« 原発安全部門への配属は、出世の終わり | トップページ | 今日も、明日も、仮設住宅で亡くなる人がいる »

2013年12月12日 (木)

原発事故から避難するバスの中で

避難するバスの中で、おそらく80代と思われるそのお年寄りがおしっこを漏らしています。

人としての尊厳が崩れ去る。それが原発避難の様子です。

先日、『なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか』(森 功著:講談社)を読みました。あの3月11日の原発事故で、避難区域に取り残された双葉病院の患者や医師たちを描いた実話です。

「鴨川さん、おしっこしたい」

避難するバスの中で、そうお年寄りは看護師さんに声をかけた。

でも、放射能に追われるように走るバスは停まれません。周囲にはトイレもない。第一、バスの中は立錐の余地がないほど、患者たちであふれている。

「ごめんなさい」

バスの中にもらしてしまって、申し訳なさそうに頭を垂れるお年寄り。

ボクはこのシーンを、広島空港から駅に向かうシャトルバスの中で読みました。涙をこらえるので必死でしたよ。

同じようなバスのなかで、しょげかえるお年寄りの様子を思い浮かべると、なんだかすごく悔しくて、悲しくて、残念な気持ちでしたよ。

人の尊厳が踏みにじられる。社会がいたわってあげなければいけないお年寄りが、誰かの父であり、母であり、祖父であり、祖母である、そんなお年寄りが、バスのなかでおしっこを漏らして謝っている。

そんなことあっちゃいけない。

3月11日。双葉病院には約400人の患者がいたそうです。大半がお年寄りや精神障害を患った人たち。

そのうち、震災翌日のバスで避難できたのは約200人。おしっこを漏らしたには、このときの様子です。

残りの患者はたった3人の医師とともに、それから数日間、放射線の汚染地域に取り残されてしまう。点滴が外れたり、わずかにタンが詰まるだけで、死んでしまうような重症のお年寄りたち。

最後の患者が救出されたのは、なんと地震から5日目。

そして、50人のお年寄りが、おもに衰弱が原因で亡くなってしまった。

ボクは今まで原発事故の模様を描いた本をずいぶん読んだけれど、ボクらとおなじような市民の側からあの事故を描いた本は初めてだった。

だから、とてもショックだった。

地震。津波。原子力災害。そこから逃れようと必死な人々。恐怖し、怒鳴り、泣き崩れ、おしっこをもらし、そきには死んでいく。人々の記録。

今、こうしてブログを書いているときも、バスで避難する場面を読みかえすと、涙でパソコン画面がにじむ。

また壊れる可能性のある原発を、再稼働したいなんて言ってるバカは、どこのどいつだ!って言いたくなる。


※ 『なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか 見捨てられた原発直下「双葉病院」恐怖の7日感』はハードカバー、1575円。

表紙には、白いベッドが散乱する双葉病院の玄関先の写真が使われている。

前から読みたいと思っていた本です。その気になれば、ひと晩で一気に読めてしまいます。

ボクの感想を言えば、あの大混乱のなかで、行政も病院も自衛隊も警察も、ちょっとしたミスを積み重ね、その結果50人もの犠牲者が出てしまったのだと思います。でも、ミスしないほうが難しい。そんな状況下だったとも感じます。

なによりも、原発事故さえなければこの悲劇は起きなかった。それだけは言えます。

« 原発安全部門への配属は、出世の終わり | トップページ | 今日も、明日も、仮設住宅で亡くなる人がいる »

東日本大震災」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1499512/54230157

この記事へのトラックバック一覧です: 原発事故から避難するバスの中で:

« 原発安全部門への配属は、出世の終わり | トップページ | 今日も、明日も、仮設住宅で亡くなる人がいる »